2012-04-08

作品30句テキスト 西村麒麟 鶯笛

 鶯笛  西村麒麟

朝寝してしかも長湯をするつもり
鶯となつて長屋を守りたし
うつかりや鶯笛を忘れたる
梅咲くや悪さうな猫伸びをして
鶯が太つてゐたる事楽し
鶯を鶯笛としてみたし
紙箱に鶯餅やちよんちよんと
餅食べて鶯笛に餅の味
鶯笛ホケキヨのところ難しき
まだ少し心が足りぬ鶯笛
ポケットの鶯笛にまた触れし
友達や鶯笛で会話して
うだうだと楽しき梅の茶店かな
遠出して鶯笛の機嫌良し
好きな子へ鶯笛を吹きにけり
最近は鶯笛で口説くなり
デート中鶯笛の手入れもす
上手くいき鶯笛で人気者
紅梅を畳の部屋で凝視して
紅梅が鼻の穴へと入りさう
梅白し天神様と蹴鞠して
家にゐて鶯笛が安心す
この頃は吹かずとも鳴く鶯笛
先頭が八田木枯鶴帰る
木枯先生無数の鶴となり帰る
鶴引くや八田木枯なら光る
鶴引くが八田木枯忌なりけり
鶯笛に先生の死を言ひ聞かす
夕べからぽろぽろ泣くよ鶯笛
天上へ鶯笛は届くかな


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