2012-07-22

〔俳コレの一句〕引っ掛かり 雪我狂流の一句 近恵

〔俳コレの一句〕
引っ掛かり 雪我狂流の一句

近 恵


他人様の波でゆらめくボートかな  雪我狂流

そんなこと考えもしなかった。俳句的発見といえば簡単だけれど、どうもそれだけではない何かを感じてしまう。というよりも勘ぐってしまうと言った方が近い感じか。

句会で御一緒したときには他の句に埋もれてしまいそうな普通で派手さのない句たちが、こうやって纏まっているのを改めて読んでみると、一緒に散歩をしながら、狂流さんの呟いている言葉を聞いているような気分になってくる。そういえばそんなこと言いそう、とか。思ったことを衒いなく口にし、そのまま俳句にしてしまったというような感じ。自選ではない効果というところもあるのだろう。
 
この句は自分が乗っているボートというよりも、第三者としてその景色を眺めているように感じる。ゆらめくというのがボートに乗っている感じではないからか。のんびりと浮いている小さな手漕ぎのボート、その少し離れたところを別のボートが行く。あるいはモーターボートか遊覧船か。その波がうわんうわんとやってきて、小さなボートを揺らすのだ。それをゆらめくと言う。けれど他人様という言葉からは、その波を受けているのは自分自身という感じもする。そこにこの句の引っ掛かりがある。ゆらめくというのはただ揺れているのではなく、水の中にいて消えて行きそうな儚さを醸し出している言葉だ。だから、揺れているボートを見ながら、自分自身もゆらめいているような感覚になっているに違いない。きっとそうなのだ。


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