2012-11-11

【週俳10月の俳句を読む】藤井雪兎

【週俳10月の俳句を読む】
平明と発見

藤井雪兎



基本的に定型でも自由律でも、平明で無理がなく、かつ発見のある句が好きですので、そういったのを選びました。

真夜中の書店の床に団栗よ 手銭誠

団栗を見るとリスなどの森の小動物を思い出します。しかも私の場合は、昔読んだ童話の影響か少し擬人化されているのです。掲句では、真夜中の書店にこっそり立ち読みに来たリスが、店主に見つかりそうになって慌てて団栗を落としたか、それとも立ち読みのお礼のつもりで団栗を置いていったか。ただの写生句ではない、秋特有のメルヘンを含んだ句です。

平らなるところなかりし花野かな 草深昌子

この光景に気付かない人は、自身が既に花野の一員になっているのかもしれません。私もその一人です。果たして作者が花野の一員になる日はいつなのでしょうか。その時花野は作者をどのように迎え入れるのでしょうか。

月光の入り来るらし耳の穴 飯島士朗

始めは耳掃除をして耳の穴の通りがあまりにも良くなったので、掲句が生まれたと解釈していたのですが、どうもそれだけではなく、この耳の穴の持ち主は、月光を聴覚で捉えているとも思われるのです。月光の音はどうすれば聞けるのでしょう。とりあえず目を瞑ってみます。

まばたきの軽さに浮いてあめんぼう 西原天気

あめんぼうの動きを見ていると確かにまばたきのようです。鋭く、素早く。動いたかと思ったら一瞬の内に結構な距離を進んでいます。そしてその後はほぼ止まっています。自分と似たリズムを持った人や物を見つけると嬉しくなります。まばたきとあめんぼうのリズムを合わせてみたくなりました。

まだなにも叩いてゐない蠅叩 

まだ何も叩いていないので、厳密に言うと蠅叩きではないですね。蠅を叩くまでは蠅叩きと認められませんし、その前に蚊でも叩こうものなら「蚊叩き」となってしまうでしょう。慎重に行動する必要がありますね。


第285号 2012年10月7日
忌日くん をととひの人体 10句 ≫読む
第286号 2012年10月14日
佐藤りえ 愉快な人 10句 ≫読む
手銭 誠 晩秋の机 10句 ≫読む
第287号 2012年10月21日
草深昌子 露の間 10句 ≫読む
第288号 2012年10月28日
飯島士朗 耳の穴 10句  ≫読む
第284号 2012年9月30日
西原天気 俳風昆虫記〔夏の思ひ出篇〕 99句
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