2012-11-11

【週俳10月の俳句を読む】岡田由季

【週俳10月の俳句を読む】
都会的な虫・99句

岡田由季



「俳風昆虫記・夏の思ひ出篇」こんなにぞろぞろと虫が登場するのに、通して読むと土の匂いのしない、さらりとした読み心地であり、さらに都会的な印象さえ残るのが不思議な99句。一句一句はそれほど「さらり」でもないので、並べ方による効果だろう。私などはひとりよがりの感覚を頼って俳句を並べてしまいがちなので、もっと研究しなくてはと思う。


朝の蜘蛛シーツにたましひの残る  西原天気

眠っていた人間のたましいか、蜘蛛のたましいか。実景としては少しくしゃっとしたぬくもりの残るシーツが目に浮かぶ。蜘蛛は嫌われがちな虫(昆虫ではないですよね)であるが、この句の蜘蛛は朝の光を浴びて小さな生き物の代表のように存在し、不気味というよりは神秘的に感じた。

テラワロス吐く息すべて黒揚羽
  
2チャンネル用語?こういう言葉を混ぜてくるのは照れ隠しだろうか。「吐く息すべて黒揚羽」が詩的テンションが高いのでバランスをとっているのだろうか。

かはほりの漂ふチークダンスかな
   
チークダンスとは、少々レトロで淫靡なムード。現実の蝙蝠の飛び方は漂うという感じではないから、何か蝙蝠的なものが漂っているのだろう。さらに怪しげである(蝙蝠も昆虫ではないですよね)。


テレビ忌のひかりの昼の鎖骨かな  忌日くん

俳句ロボットにはもうだまされないぞと思いながら、やはり乱数がもたらす言葉の出会いに魅力を感じてしまう。忌日くんはどうやらなんでも忌日にしてしまう仕組みのようだ。テレビ忌というのは近頃では妙に現実味をおびた言葉のように思える。「ひかりの昼の鎖骨」も昼のメロドラマを連想させやるせない。

汗すぐに風に冷えたる子規忌かな  草深昌子

汗をかいた後のひやっとする感覚は誰にでも経験のあることだろう。暑さがようやくおさまる子規忌の頃の気候を思い、また冷えた身体の感覚を追体験することにより子規の身体への連想へも通じるのである。

月光の入り来るらし耳の穴  飯島士郎

「らし」なので、月光が耳に差し込んでいるのが目に見えているわけではないが、耳は確かに月光が入ってくるのを感知しているようだ。月光を視覚ではなく触覚で体験していることが新鮮に感じた。耳で受け止める月光の感触とはどのようなものだろうか。なかなか甘美なものに違いない。


第285号 2012年10月7日
忌日くん をととひの人体 10句 ≫読む
第286号 2012年10月14日
佐藤りえ 愉快な人 10句 ≫読む
手銭 誠 晩秋の机 10句 ≫読む
第287号 2012年10月21日
草深昌子 露の間 10句 ≫読む
第288号 2012年10月28日
飯島士朗 耳の穴 10句  ≫読む
第284号 2012年9月30日
西原天気 俳風昆虫記〔夏の思ひ出篇〕 99句
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