2012-12-16

「洛外沸騰」レポート 「伝える」というテーマ 小倉喜郎

「伝える」というテーマ
第23回現代俳句協会青年部シンポジウム「洛外沸騰」に参加して

 
小倉喜郎


レポートを書くつもりで参加していなかったので、メモなどを全くとっていなかった。これは私の印象でしかない。全体としては、よく計画され、準備されたシンポジウムであった。知恩院という会場、受付、資料など気配りのあるものであった。当日は少し冷たい雨が降っていて、それもまた雰囲気を盛り上げていた。中でもパンフレットは、表紙は木漏れ日の眩しいブルー、裏表紙は鮮やかな朱色であり、後に会場への質問アンケートに使われるという機能付き。

青木亮人氏(愛媛大学教育学部准教授)の基調講演のあと、青木氏を含め、岡田由季氏(炎環・豆の木)、松本てふこ氏(童子)、彌榮浩樹氏(銀化)と司会の三木基史氏(樫)の5人のトークが始まった。三木氏がパネラーに質問をする形式で進められた。

テーマは大きく3つに分かれていて資料1の通りである。各テーマごとにいくつか具体的質問が投げかけられた。以下は司会者三木氏から提供されたものの一部である。

(資料1)
(テーマ1)
個人が発信力を有する現在、また、将来に向けて、俳句における師弟関係や結社は、俳句で何かを伝える、残す、という役割において、今後、機能し得るか。
 (テーマ2)
私たちは誰に対して(もしくは何に向かって)俳句を作っているのか。俳句をつくることは何のための行為だと思うか。
 (テーマ2)
私たちは誰に対して(もしくは何に向かって)俳句を作っているのか。俳句をつくることは何のための行為だと思うか。

テーマ1は現代俳句協会という性質上、結社が避けては通れないものなのだろうか、と思いつつ聞いていた。それぞれパネラーの経験を話されたが詳しくは覚えていない。ただそのとき感じたのは、私自身のことであった。私は神戸を中心に全国に支部を持つ中規模の結社に所属している。俳句界でもあまり知られていない結社だから、自分が何かを残さなければ、大切なものが失われてゆくのではないかという、使命感に似た妙なものが頭をよぎった。

一番印象に残ったのは、テーマ2の中で、時事俳句を作るのか、そして東日本大震災または阪神淡路大震災の作品は作ったか。という質問である。パネラーのうち2人は作らない、1人は作ろうとした、というような回答だった。会場では半々くらいであった。(このときパンフレットの青い面と赤い面が活躍。これは良いアイディア、私もどこかで使おうと密かに思った。)ただ時間の関係で、この話はここまでで終了する。これからというところで…。

震災以前から、時事俳句については様々なことが言われ、震災後には様々な句が作られ、批判されたりしてきたわけだ。中には俳人のでありながら歌集を出すヘンなモノまで現れた。私にとっては、震災俳句を作ることと、作らないことは大した違いではない。問題は震災の句なりは原発事故の句が、俳句として魅力があるかどうかという一点である。また読み手も、感情に流されることなく、しっかりと受け止める態勢をとれることが要求される。私個人としては、これほど大きな事件事故を前に、何も表現しないのはむしろ不自然だと思っている。

「伝える」というテーマは結局、時代の流れと普遍性というテーマにつながってゆくと考えていた私は、テーマ3の具体的な話を期待していたのだが、最後の30分程度、準備された資料に触れただけであった。ここが唯一具体的であったので、俳句を題材にもっと議論を聞きたかった。テーマ3のために準備された資料の一部抜粋して資料2として紹介しておく。予めパネラーが質問に答えていたものである。

結局質問が広範囲に渡っていたので、パネラーの現状を述べるにとどまり、沸騰まで至らなかったのが残念。是非ともこれらを出発点として、青年部という俳句の世界ではまだまだ若いとされる集団らしい内容に発展すればと思う。第2弾を期待している。

それにしても俳句に関するシンポジウムは難しいなと感じた。それはきっと我々が日頃から句会でそれぞれの価値観をぶつけ合い、しばしば沸騰しているからだろう。


(資料2)※抜粋
さて、次の人々に向けてあなたなら具体的にどんな句を伝えますか。それぞれ一句以上挙げてください。複数回答の場合、推薦度の強い順。

Q10 日本のことを知らない外国人に
青木 夏草や兵どもが夢のあと 芭蕉
岡田 たてよこに冨士伸びてゐる夏野かな 桂信子
松本 山又山山桜又山桜 阿波野青畝
彌榮 をとりてはらりとおもきすすきかな 飯田蛇笏
   階段が無くて海鼠の日暮かな 橋閒石
   骰子の一の目赤し春の山 波多野爽波

Q12 俳句に興味が無い若い世代に
たとえば大島優子(AKB)に
青木 じゃんけんで負けて蛍に生まれたの 池田澄子
岡田 頭の中で白い夏野となつている 高屋窓秋
松本 ふはふはのふくろふの子のふかれをり 小澤實
   初夢のなかをどんなに走つたやら 飯島晴子
彌榮 ひるがほに電流かよひゐはせぬか 三橋鷹女
   うたたねの泪大事に茄子の花 飯島晴子
   天体やゆうべ毛深きももすもも 折笠美秋

Q15 芭蕉に
青木 桐一葉日当たりながら落ちにけり 高浜虚子
岡田 向日葵のその正面に誰も居ず 津川絵理子
松本 柿の蔕みたいな字やろ俺(わい)の字や 永田耕衣
彌榮 じぶんの句を「平成二十四年には、こんなふうになってますけど」とかいって見せます。

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