2013-01-20

【週俳12月の俳句を読む】 越智友亮

【週俳12月の俳句を読む】 
直感を確かめる

越智友亮




マフラーに荒れし唇引つ掛かる   平井岳人

・口元を覆うかのようにマフラーを巻いている作中主体を思い浮かべた。

・しかし、マフラーと唇が常に触れることになるために「引つ掛かる」という修辞が活きていないようにも感じられる。ということは、作中主体が何らかの動作をしていると考えられはしないか。

・携帯電話を確認しようと目線を下げたのかもしれないし、友達に声を掛けられて振り向いたのかもしれない。いずれにしても作中主体はマフラーにふと唇が触れたことを実感したのであろう。ゆえに「引つ掛かる」という修辞を用いたのであろう。


夕方の部屋夕方の電気ストーブ   上田信治

・なんともいえないさみしさを感じた。

・「夕方」という時間に作品世界が限定されたためである。日が沈みかけ、肌寒くなった部屋に鳴りわたる電気ストーブの起動音。そのほかには物音ひとつしていないような静けさがそこにはある。

・作者の心情や動作を経ずに「夕方」「部屋」「電気ストーブ」といった名詞だけで作品が構成されていることや、「夕方」という修辞を繰り返して用いたことによって、その「静けさ」が増幅されているように思えた。



第293号 2012年12月2日
戸松九里 昨日今日明日 8句 ≫読む
山崎祐子 追伸 10句 ≫読む
藤井雪兎 十年前 10句 ≫読む
第294号 2012年12月9日
竹中宏 曆注 10句 ≫読む
第295号 2012年12月16日
山崎志夏生 歌舞伎町 10句 ≫読む
平井岳人 つめたき耳 10句 ≫読む
第296号 2012年12月23日
上野葉月 オペレーション 10句 ≫読む
第297号 2012年12月30日
上田信治 眠い 10句 ≫読む




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