2013-01-20

【週俳12月の俳句を読む】 大石雄鬼

【週俳12月の俳句を読む】 
意思をもつこと

大石雄鬼




掻き込む父啄む母よ石蕗の花  山崎祐子

掻き込むようにして食事をする父、啄むように食事をする母。作者の家庭、作者の思い出というより、普遍的な父と母に対するイメージ。「掻き込む」と「啄む」だけで、それらを創出してしまう俳句というものに、今さらながら驚く。


(ふく)ます乳マスクの上の目だけで見る  竹中宏

マスクの上の目が印象的。その目は、必ずしも母親として子を思う愛おしさには見えない。情とかそういうものではない、動物としての本能、もっと言ってしまえば、非情さをも感じさせられる、生存する、生きていくための眼差し。情を超えた眼差し。思い込みを断ち切れば、ひとつの側面が見えてくる。


ホッカイロ最後は硬くなりにけり  山崎志夏生

ホッカイロという使い捨て懐炉。たしか、北海道ももじっていたかと思う。それが使い終わって硬くなる。冷めて硬くなったように感じる。「最後は硬く」に物事の終末、人生の終末、世紀末の印象が心と頭をよぎる。懐炉だけの話が、受け手によって勝手にイメージが広がっていく。


マフラーに荒れし唇引つ掛かる  平井岳人

からだを温めるはずのマフラーに唇が引っ掛かった。それも「荒れし唇」なのだから、からだも弱っていたかもしれない。ほんの一瞬の出来事。いや、出来事とも言えない、ほんの些細なこと。それを掬い上げれば、マフラーに意志があり、唇をわざと引っ掛けたような出来事になる。見過ごさない書き手の意思。


公園の銀杏が散つてまつ暗に  上田信治

あたり前のことでも、意思をもって繋げれば、そこにはある意味が生まれてくる。それもなるべくありのまま表現したほうが、逆にインパクトが強くなったりする。ありのままだけども、意思が見えるかどうかが重要。そこに書き手の心理が透け、読み手が呼応する。


第293号 2012年12月2日
戸松九里 昨日今日明日 8句 ≫読む
山崎祐子 追伸 10句 ≫読む
藤井雪兎 十年前 10句 ≫読む
第294号 2012年12月9日
竹中宏 曆注 10句 ≫読む
第295号 2012年12月16日
山崎志夏生 歌舞伎町 10句 ≫読む
平井岳人 つめたき耳 10句 ≫読む
第296号 2012年12月23日
上野葉月 オペレーション 10句 ≫読む
第297号 2012年12月30日
上田信治 眠い 10句 ≫読む

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