2013-01-20

【週俳12月の俳句を読む】 早川純子

【週俳12月の俳句を読む】 
夢に見ちゃうじゃないか

早川純子


この先は冥途へつづく紅葉かな   戸松九里

在所では長い残暑のためか明確な紅葉を見ることができなかった。衰えてゆく陽のなか、異界へと傾れこんでゆくような圧倒的な紅葉を真冬のPCの前でわたしはやっと手に入れることができた。


神杉に重力綿虫の自在   山崎祐子

杉在るところ水が在る。一所に立ちて太い神杉のラインに綿虫のなんと儚く且つ図太く自在なのだろう。それでどうなんだと言われればそれまでだが、酒呑みには捨て置けぬ景。


眠剤売った金募金しろってか姉ちゃん   藤井雪兎

そう云いながら、アンタその金募金しちゃったんじゃないかい?そんな男、いたな。ちょっとしょっぱいな。


椎咲くや晝も夜の音救急車   竹中 宏

音。角笛を吹き鳴らせば城壁は崩れ落ちる。この車がひとたび走れば南中の太陽さえも急転直下、夜の一部に取り込まれる。椎咲く。甘い香りのなか心は不安定になる。


オキャクサンドココッテルカ十二月   山崎志夏生

聞くだけ野暮ってもんさ。少し湿度のある掌。


凍つる夜や配電盤に目の落書き   平井岳人

凍(シバ)れちゃった夜中。なにもこんな時分に外で呑まなくたってよさそうなもんだけれど。絵心のない奴の落書きはヤだね。妙なタイミングでギロッとこっちを見やがるんだ。


酢漿草の葉が苦いぜよボブ   上野葉月

ボブ。酢漿草の花の色のアイツ。夢に見ちゃうじゃないか。


公園の銀杏が散つてまつ暗に   上田信治

銀杏はどこか潔い樹だ。基本は垂直線で造形されている。真直ぐに伸び真直ぐに枯れ、その扇を落としきれば枝の間には闇しかなくなる。太陽は地面に磔にされたのだ。極、僅かな、間、であるが。 


第293号 2012年12月2日
戸松九里 昨日今日明日 8句 ≫読む
山崎祐子 追伸 10句 ≫読む
藤井雪兎 十年前 10句 ≫読む
第294号 2012年12月9日
竹中宏 曆注 10句 ≫読む
第295号 2012年12月16日
山崎志夏生 歌舞伎町 10句 ≫読む
平井岳人 つめたき耳 10句 ≫読む
第296号 2012年12月23日
上野葉月 オペレーション 10句 ≫読む
第297号 2012年12月30日
上田信治 眠い 10句 ≫読む

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