2013-04-21

林田紀音夫全句集拾読 262 野口裕


林田紀音夫
全句集拾読
262

野口 裕





雨の日のステンドグラス朱を流す

平成元年、未発表句。「草城全句集出版記念会」の詞書。会場となったホテルに、ステンドグラスでもあったか。朱色のガラス部分に当たる雨が血のように流れ、肺病に苦しんだ師の面影が偲ばれる。

 

手花火の手に繃帯の白まじる

平成元年、未発表句。誰が怪我したのかは分からないが、花火が始まるまでは意識していなかったであろう白い繃帯。明るくなったそれぞれの手元を比べるときに、ひときわ目立つ。

 

白靴で出ていちにちの疲れ溜まる

平成元年、未発表句。この自嘲は、「隅占めてうどんの箸を割り損ず」の系譜に属し、岸本水府の「ぬぎすててうちが一番よいといふ」とも一脈相通ずるだろう。外面良く無理して見栄を張った報いが夕刻にやって来る。靴擦れまで起こしているかも知れない。

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