2013-05-05

林田紀音夫全句集拾読 264 野口裕


林田紀音夫
全句集拾読
264

野口 裕





航行の灯も年送る灯の中に

平成元年、未発表句。最初の灯と、後の灯が同一のもののようにも思えるが、突き詰めて決定するまでもないだろう。沖ゆく船の灯を眺めながらの感慨は安堵感に満ち、思わず「も」を使用しての接続がされている。

 

雪空を歩きめつぶる理容の椅子

平成二年、未発表句。雪道とやると平凡の極みだが、雪空にはどこか非現実感が漂う。下五の窮屈さや理容店を理容と省略する強引さがすべてふわふわと浮遊する不思議な感覚を助長しているから奇妙だ。

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