2013-05-12

林田紀音夫全句集拾読 265 野口裕


林田紀音夫
全句集拾読
265

野口 裕





蜜柑剥くこのまま寝(いね)るには惜く

平成二年、未発表句。無聊と蜜柑の取り合わせ。無聊の果ては悔恨に行き着くのだろうが、蜜柑は現在の時間のたゆたいのを強く示唆する。無聊を発想の核とする紀音夫の句は今までにない。紀音夫にとって、夜は不安と焦燥の場だったからだ。「いね」る、というルビも異例。

 

鼻梁幽かテトラポッドに雪残る

平成二年、未発表句。テトラボッドの稜線に残る雪を、鼻梁に見立てた。無機的な文明の産物から、わずかに浮かぶ風貌は誰の面影か。



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