2013-05-12

【週俳4月の俳句を読む】郷土愛が生み出すうた 舟倉雅史

【週俳4月の俳句を読む】
郷土愛が生み出すうた

舟倉雅史



僕が「郷土かるた」というものの存在を知ったのはつい一週間ほど前のこと。ラーメン目当てで栃木県の佐野を訪れた際、たまたま立ち寄った佐野市葛生伝承館で展示品の「葛生町郷土かるた」を見たのが最初だ。子供たちに郷土に関心を持ってもらうために作られたというような簡単な説明が添えられていたようだが、その時はさほど興味を持たなかった。

ところが帰宅後、依頼された原稿を書くために、「週俳」の対象作品に目を通し始めてすぐ、外山一機氏の「上毛かるたのうた」もまた、郷土かるたの一つであることに気づいた。さっそくネットで「郷土かるた」を検索し、いくつかのホームページをのぞいてみて、次のようなことが分かった。

・郷土かるたは、日本全国に存在する。

・郷土かるたは、郷土の歴史・地理・文化を学ぶ教材として作られた。

・群馬県は、つくられた郷土かるたの数が多く、かるた大会も盛んである。

ここからは想像だが、外山一機氏も郷土かるたの盛んな群馬県に生まれ育ち、「上毛かるた」に親しんできた。そんな中で育まれた郷土への愛が、「上毛かるたのうた」を生み出したのではないか。

「上毛かるたのうた」は、「上毛かるた」そのものと、それに添えられた短いうたからなる。すなわち、「あ…浅間のいたずら鬼の押し出し」の部分は「上毛かるた」。それに続く「お椀の舟に箸の櫂/御旗立てむは/鬼遊び」が、外山氏による「うた」の部分だ。しかし、両者は切り離して読むのではなく、全体を一つの作品として読み味わうもののようである。

「かるた」の部分は、中には「関東と信越つなぐ高崎市」のように「五・七・五」と俳句と同じ形式になっているものもあるが、ほとんどが「七音+五音」または「七音+七音」で出来ている。また、続く「うた」の部分はほとんどが「七音+五音」を二つ重ねた形である。したがって、全体を通して読めば短歌より長く、「うた」だけを読めば短歌より短い。いずれにしても、「五・七・五・七・七」の短歌形式と比べて、より純朴な響きが聞こえてくる。

内容的には、童謡の歌詞を取り入れたもの(「お椀の舟に箸の櫂」、「十五夜お月さん見てはねる」、「裏のはたけで/ぽちがなく」、「わたしの人形/よい人形」)、軍歌の歌詞を取り入れたもの(「ここはおくにを何百里」)、一昔前の歌謡曲を思い出させるものなど、さまざま。懐古趣味的な作品が多い印象があるが、歴史を学ぶための「かるた」を母体としているのだから当然のことだろう。残念ながら僕には鑑賞しきれない歌も少なからずあるのだが、作者が想像の羽を広げ、時空を飛び越えて作り上げた小世界を44も並べた眺めは、なかなかの壮観である。

こうして読んでくると、「上毛かるたのうた」は、形式的にも内容的にも俳句と呼ぶには少々無理があるものの、独特の魅力を湛えた力作であることは否定できない。こうした作品も取り上げてしまうところが、「週刊俳句」の度量の広さと言えるのだろう。

一昨日、仕事で浅草に行った折、浅草文化観光センター内で、「台東区郷土かるた」なるものが800円で売られていることを発見。以前の僕だったら絶対に見逃していただろう。



〔参考にしたHP〕「郷土かるた館」「日本郷土かるた研究会



第311号 2013年4月7日
外山一機 上毛かるたのうた  ≫読む

第312号 2013年4月14日 
豊里友行 島を漕ぐ  ≫読む
西村麒麟 でれでれ  ≫読む

第313号2013年4月21日
渡辺竜樹 鯉幟  ≫読む

第314号 2013年4月28日
篠崎央子 日課  ≫読む
松尾清隆 休みの日 ≫読む

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