2013-05-26

【俳誌を読む】『東大俳句』に関わった皆さんへ 松本てふこ

『東大俳句』に関わった皆さんへ

松本てふこ


こんばんは。

先日は『東大俳句』をご恵贈下さりありがとうございました。

メールで感想をお送りしようかな、と思ったんですけど、
書いてるうちに長くなってしまったのと
他の人にも読んでもらえると嬉しいかなという気持ちになったのでこうやって『週刊俳句』に載せていただくことにしました。

大したことを書く気はなくて、
ただただ感想を伝えたかっただけなので、
どうか気楽にお読みいただければと思います。

まずは、感銘句をいくつかひかせていただきます。

目を閉ぢてはじまる遊び蝶の昼  日原 傳

知的なエッセンスが詰まった句風、という印象を
傳さんに長年持っていたのですが、
こういう柔らかな感性もお持ちなのかと感心してしまいました。
エッセイのKさんって絶対岸本さんのことですよね…。

いつもこの炬燵にありて微笑める  岸本尚毅

炬燵の句というと必ず「かの人をここの炬燵に呼びたくて」という爽波の句を思い浮かべてしまいます。

岸本さんは以前もどこかで炬燵の句を詠まれてた気がするのですが、岸本さんが炬燵の句を詠まれてると爽波だったり裕明だったり、もう会えない人をそこに見つけて懐かしむような風合いを感じるのは私だけでしょうか。

みどりごは握りたるのみ福の豆  明隅礼子

礼子さんの吾子俳句、好きなんですよねえ。
愛がしゃしゃり出ずに観察眼というか
「おっ」と楽しそうに眺めてる感じがするからでしょうか。
この句の場合は、そういった観察眼に
ちょっとあわれがプラスされていて素敵だと思いました。

卒業の部屋はそのうち夕空に  上田信治

上田さんが『東大俳句』に載ってらして何だか不思議。
参加されてるんですねー。

この句は「卒業子の部屋が」ってことなのかな。
夕空の色に染まる、という風に捉えて、センチメンタルな気分になりました。きっとまだ部屋の主は帰ってきていないのでしょうね。

椿ぽとりぽとりと水を昏くせる  しなだしん

誤解を恐れずに書けば、
憎たらしいほど巧い、というのはこういう句のことかなと思います。
形としてはよく見るし、褒め過ぎかなとも思うのですが
上五を余らせてちょっとタメるところとか、
大人の詠みぶりですよね。悔しい。

片恋や日傘に意味のなき模様  野口る理

何を詠んでもちょっと奔放さが香るところが
彼女の句の魅力だと実は長年思っております。

この句も「意味のなき模様」と言い放ってて
「え、じゃあ意味があればいいの?」と突っ込みたくなるけど
その無茶さが日傘とか片恋、というガーリーな単語群に
猫パンチを食らわせてるようで楽しいです。

すみません、ゲスト枠は全員選びませんでした。

現役(?)の方々のはお一人ずつ選びます!

少女コミック付録のポーチ持つ春よ 今泉礼奈

「春」が効いてます。これ、他の季節じゃ成り立たないです。
浮わついてちょっと借り物めいた新年度の暮らしを思わせます。

「少女コミック」は小学館の雑誌の名称なのか、
ジャンルの総称ということなのか、
職業でマンガに携わっている人間としても少々気になるところ。

永き日の家長のような顔をする   越智友亮

バカっぽくていいですね。
家長にはバカにされても揺るぎない顔をしてて欲しいです。
越智くんには、ジェンダーを逆手に取った句が似合いますね。

浅春の爪に透けたる肉の色  小野あらた

あくまで淡々としながらも、単語の選択が恐ろしいですね。
肉かあ…。

春眠の続きは書架の奥あたり  千倉由穂

由穂さん、「スピカ」の「よみあう」で
村越くんとスピカの面々と座談会されてましたよね。
俳句甲子園出身で大学に入ってからも続けてる人の
最近のモデルケースとして楽しく読みました。

今回初めてまとまったかたちで句を読んだのですが、
ふわっとしたりギラギラしてたり、
とにかく感性で押し切ってるところが面白かったです。

冬夕焼ギリシヤは溶ける前の蝋  野口ま綾

カッコいい隠喩ですな…。
冬夕焼がそのカッコ良さに負けずに
いい感じで効いてます。

立ち止まるとき風船のゆき過ぎぬ  平井岳人

ひとつひとつの言葉がくっきりした印象で、
景を思い浮かべやすい。全体的にそういう印象でした。
算数の通過算(一切解き方を覚えていないんですが!)を
思い起こさせます。

ふきのとうロボットに生まれなかった  福田若之

彼の句を読む時ってどうしても、
「さあ! どうやって驚かしてくれるんです!?」
という気持ちになりすぎてしまって困るのですが、
そういう気持ちに冷や水をぶっかけてくれたのが
「ただごとがたり」というタイトル。

しかしこんなことでめげたりしてたら
若之くんの読者はつとまりません。
実際読んでみると取り合わせというか
言葉と言葉、モノとモノをぶつけるだけぶつけるぜ、
あとは野となれ山となれだぜという句風は健在。

この句を選んだのは、私ならきっと「生まれたかった」に
したなあ、と読むたびに思ってしまうから。
いいとか悪いとかではなく、真っ先に強くそう思って
それ以上の感想が見つからなかったです。

草摘めば昨夜(きそ)屠られし牛の屎(くそ)  堀田季何

季何さんの句から強い倫理観を感じることがよくあります。
考えない怠慢をまず自分に許さず、
その上で他者にも「あなたはどう思う?」と静かに穏やかに、
けれど強く問いかけようとする姿勢というか。

この句は季語の中に生と死の交錯を読み取り、
生きるために殺す人間の営為を淡々と描いた句だと思いました。

iphoneが世界のぜんぶつくしんぼ  村越敦

「つくしんぼ」という季語選択は、
この句がまだ未来のある人を描いていることを暗に伝えています。

ぜんぶなわけないけど、これでいいやって思うか、
まだ見えてないところがあるならって
iphoneが教えてくれないことを自分で知りに行くか。
就職を控えた作者の句だと思うとなんだか切ない。

お仕事頑張ってー(私信かよ)。

花貝や幼なじみといふ異性 森篤史

『伊勢物語』の筒井筒みたいなふたりなの? と思ってしまいました。

句群から読み取れる、良質な青春映画のような折り目正しさ、
恥じらいとときめき…眩しいとしかいいようがないです。



本郷句会のルーツに関してtwitterで色々議論がなされていて
興味深く眺めつつ思ったのですが、

今本郷句会に携わってる方々には、
伝統ある東大ホトトギス会だなんだと言われても、
今サークルにいるのは自分たちなのだから
本郷句会は自分たちのもの、だと思ってて欲しいです。

全然関係ないんですけど、私、生まれてこのかた
20人以上部員がいる部/サークルに入ったことがありません。

中学 ~高校で演劇部にいた時はなるべく役者の数が少ない台本を探しましたし、大学では俳句研究会で20人の会員数を確保するために友人に名前を借りたりしましたし…
(10年以上前のことなんで、もう時効ですよね)

マンモス大学に通ってたっていうのに…。

閑話休題。

テニサーみたいにたくさん実働人数がいるわけではないだろうし、
新歓は毎年人数不足だろうし、
伝統が新歓手伝ってくれるわけではないので、
可愛かったり口がうまい、いけてる先輩とか
授業のノートが簡単に手に入るとかそういう方が
普通の大学生がサークルに入る時には
魅力になるに決まってるじゃん、という困難が
大学の俳句サークルが活動していく上では
常につきまとうことだと思うんです。

いざいい新入生が入ってきても、
楽しく詠んで褒められたいだけなのに、
結社に入って毎月課題みたいに句を作らなきゃいけないの?とか
真剣に俳句人口の増加について考えなきゃいけないの?とか
真面目に俳句に取り組んでいる人たちに
ちょっと食傷気味になるなんてこともありそうです。

でも句会やその後の飲み会で、
あの句がいいこの句がいいって話し合うことが
大昔の偉い俳人とやってることは一緒だと思った時に
ああ、これはなかなか楽しいな、とその時だけでも思えれば
それでいいんだと思います。

その気持ちを大切にしていれば、
この後結社に入ろうが入るまいが、続けようが続けまいが
俳句はきっとその人にとって宝物になると思います。

なんか精神論で締めてしまった。すみません。

私は高校時代、俳句甲子園と全く縁がなく
(第一回目の最優秀賞の方と同学年ですが、私は当時、ふなっしーの街でぼんやりと受験生をやっていたもので)
大学に入って妙にヒマだったもので、
何かやってみっか、と思って始めたような適当な奴なので、
本郷句会に私のような適当な人間が紛れ込めるすき間が
いつまでもあったらいいなあ、とちょっと遠くから願ってやみません。

『東大俳句』第二号、是非出して下さいね!
その時はまた感想を書きます。

それではまた。

松本てふこ拝

6 コメント:

Kika さんのコメント...

てふこさん、ありがとうございます♪  (*^_^*)

杉原 祐之 さんのコメント...

さらりと私学の俳句会の本質にも触れているこう文章だと存じます。
我々はたぶん私学の俳句会向きでしたと、勝手にてふこさんを巻き込みます。

ゐこまだゐすけ さんのコメント...

お読みいただき、ありがとうございます!
丁寧な文章で、うれしいです。

てふこ さんのコメント...

コメントいただき、ありがとうございます!
>Kikaさん
ご無沙汰してます!
今度は句会でお会い出来ますように。

>祐之さん
国公立/私学の違いは盲点でした!
早慶の俳句研は何もかもが面白いほど違ってたので、
そういった思い出が鮮明なうちに
何か書いておくのも面白いかもしれませんね…と
祐之さんをけしかけてみます。

>ゐこまさん
生駒くんのエッセイ(作品もだけど特に)、
すごく良かったです。
ああ、こういう気分だったな、と懐かしい部分もあって(私は2ちゃんばっかり見ていたけど)。


いまいずみれな さんのコメント...

松本てふこさま
「東大俳句」を読んでいただき、ありがとうございました!
東大学生俳句会のことも考えてくださり、大変うれしく思います。
ちなみに、少女コミックは総称として使いました^^

てふこ さんのコメント...

>いまいずみさん
こんばんは! コメントありがとうございます。
本郷句会は本当にのびのびした雰囲気で
沢山楽しませていただいたので恩返しになったらと思い
書かせていただきました!