2013-06-16

【週俳5月の俳句を読む】川又夕 星が咲く朝

【週俳5月の俳句を読む】
星が咲く朝
 

川又 夕


早熟の果てがこの余韻なのだと、ベッドに溺れながら思いを馳せている。

戒めの縄目あらはに桜の夜   菊田一平

無理な体勢をしなやかに受け容れた時、驚きながら悦ばれるのが嬉しい。
ひとの躯が縛られるように。樹齢を重ねた木の幹には肉感がある。

満ち干きの潮に戦げり石ぼたん

海がよく見える道で、私を助手席に乗せて手を握るひとのことを考えていた。
そよそよと、絡み付いてはくれない触手の蠢きにもどかしい思いをする。



蝸牛行方をさぐる角を立て   金中かりん

弱みを探り当てるために尖らせた舌は、罪深い。
掠めるように這い回る意地悪。だから触角のように反応してしまう。

軒忍夫の遺せし匙磨く

切ない想いに共鳴するのは、いつかの自分だからかも知れない。
輪郭をなぞる行為は過去を余りにも濃い光にする。



わかったふりで暗喩のような木耳食う   金原まさ子

ゆっくりと咀嚼する姿は官能的。
眼を閉じている姿は尚更であることを、未だ知らないひとがいる。

セロリスティックの軽さで春の気狂れかな

軽くても、確かなかたちのあるセロリスティック。春に気が狂れるのは決まっていたことのように思えてくる。
男のひともセロリスティックのようになれば良い。

息をするように俳句と生きて十年。
心よりも先に躯が欲深くなる朝を重ね、肌に触れるようにまた俳句が詠みたくなる。


第316号2013年5月12日
菊田一平 象 10句 ≫読む

第317号2013年5月19日
金中かりん 限定本 10句 ≫読む

第318号2013年5月26日
金原まさ子 セロリスティック 10句 ≫読む

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