2013-07-07

自由律俳句を読む 1 海 馬場古戸暢

自由律俳句を読む 1


馬場古戸暢



種田山頭火や尾崎放哉で知られる自由律俳句は、21世紀に入ってなお、その生命を燃やし続けている。本連載では、様々な自由律俳句をとりあげ、鑑賞して行きたい。


春の海へ裾をあげる  高橋暁子

読後、春先の浜辺で裾をあげて遊んでいる女が、一瞬にして眼前に現れる。まだ少しばかり冷たい潮風に吹かれながら、女の白いふくらはぎが海に濡れて輝いている。若い二人の様子ととってもいいし、年配の女性たちが遊んでいる様として読んでも味がある。

そんな女をみつめる者が、すぐ側にいた。

小さい店の福助海をみている  きむらけんじ

句集『鍵の穴』(文芸社、2002)収録。少しさびれた、地方の海辺の商店を想像する。福助は、毎日毎日、海へ向かっているのだろう。その目には、「春の海へ裾をあげる」女が映っている。彼は日々、眼福にあずかり続けているのである。

この静かな海も、いつしか夕焼けに飲まれていく。

障子あけて置く海も暮れ切る  尾崎放哉

吉村昭の小説『海も暮れ切る』の題名は、この句からとったものだろう。作者はこの日は屋内にいて、海辺で遊ぶ女を見ることはかなわなかったのではないか。涼しい潮風に吹かれて、彼の一日が終わって行く。なお、原句は「すっかり暮れ切るまで庵の障子あけて置く」、荻原井泉水の添削を受けて掲句のかたちとなった。

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