2013-07-14

新幹線に乗る直前にとりあえず手軽に買うことの出来る無難な東京土産 澤田和弥句集『革命前夜』の一句 山田露結

新幹線に乗る直前にとりあえず手軽に買うことの出来る無難な東京土産
澤田和弥句集『革命前夜』の一句

山田露結



東京に見捨てられたる日のバナナ  澤田和弥

ちょっと乱暴ですが、この句、つづめると「東京バナナ」になります。「東京バナナ」といえば東京土産の定番です。正式には「東京ばな奈」ですね。スポンジケーキの中にカスタードクリームが入っているこのお菓子、バナナ味のほかにキャラメル味、プリン味、チョコ味などさまざまな種類があり東京の主要駅や空港などで販売されています。東京駅内にはいくつか販売店があるのでうっかりお土産を買い忘れたなんてときにも「新幹線に乗る直前にとりあえず手軽に買うことの出来る無難な東京土産」として便利です。

さて、澤田和弥氏は昭和55年、浜松生まれ。進学のために上京したのでしょうか。句集のプロフィールには「早稲田大学大学院修士課程中途退学」とありますから、もしかすると何かやむにやまれぬ事情があって東京を去らなくてはならなかったのかもしれません。そのあたりの心情が「見捨てられたる日」という言い方に表れていると読むことも出来ます。この句の少しあとには「新幹線迅し水虫は痒し」という句もあります。夢や希望を、あるいは何かしらの野心を持って東京へ出てきた人が志半ばで帰郷するときの気持ちとはどんなものでしょうか。そういう私も進学のために上京し、卒業とともにやむなく東京を出た経験がありますので、この句の心情は他人事のような気がしません。

夢破れ、うなだれて帰郷する者にとっても「東京ばな奈」はやはり「新幹線に乗る直前にとりあえず手軽に買うことの出来る無難な東京土産」として便利なものなのかもしれません。


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