2013-08-04

【週俳7月の俳句を読む】ポケット 栗山心

【週俳7月の俳句を読む】
ポケット

栗山 心



ポケットに入らぬポケット版薄暑   小野富美子


夏の初めに薄手のワンピースを買った時、店員さんが「実はこの服にはポケットが付いているんですよ」と、得意気に言った。そもそも女性用の服には、デザイン上の理由でポケットの付いていないものも多い。付いていても、実用というより、デザインとしての存在であったりする。そこに来て、「フルサイズよりはやや小さめ」程度の意味の「ポケット版」の本。もちろんポケットには入らず、ちょっともやもやした気持ちになりつつも、仕方ないか、と思う。「薄暑」と、ストンと終わる感じに気持ちが出ている。ところで、最近の男性のワイシャツには、胸ポケットが付いてないものが多いそうである。スリムなシルエットの流行の影響らしい。昨日、浴衣売り場の店員さんから聞いた話では、スマホが浴衣の袂から落ちやすいので、巾着を持つ男性も多いとか。荷物は全てポケットに入れて、手ぶらで歩く男性は、いずれ絶滅するのかもしれない。ポケット版という言葉も、やがて死語になるのだろうか。


鶯谷のタオル黄色し桜桃忌   藤 幹子

美容室などの業務用のタオルは、沢庵のような真っ黄色が多い、という印象がある。しかし、「鶯谷」で想像するのは、在住の方には失礼ながら、やはりラブホテルか。かつては文人墨客の里でありながら、現在は一大ラブホテル街。知らずに子規庵辺りに吟行に来て、どぎついラブホテルのネオンに、気まずい雰囲気になる俳句愛好者も少なくないことだろう。男女関係の盛んだった太宰治の忌日、桜桃忌。鶯谷では、今日も大量のタオルが消費されているのである。


第324号 2013年7月7日
マイマイ ハッピーアイスクリーム 10句 ≫読む

第325号 2013年7月14日
小野富美子 亜流 10句 ≫読む
岸本尚毅 ちよび髭 10句 ≫読む

第326号 2013年7月21日
藤 幹子 やまをり線 10句 ≫読む
ぺぺ女 遠 泳 11句 ≫読む

第327号2013年7月28日
鳥居真里子 玉虫色 10句 ≫読む
ことり わが舟 10句 ≫読む

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