2013-09-15

自由律俳句を読む 11 藤井雪兎 1 馬場古戸暢

自由律俳句を読む 11 藤井雪兎〔1

馬場古戸暢


今回より少し趣を変えて、自由律俳句を読んで行きたい。すなわち、作家ごとに数句を取り上げて、鑑賞文を付す形式をとる。

その初回となる今回は、藤井雪兎(ふじいせっと、1978-)の句の鑑賞を行う。氏は既に週刊俳句において、10句作品「十年前」や小文「現前するリズム」を発表しているので、ご存知の方も多いだろう。第10回尾崎放哉賞で入賞を果たし、また、自由律俳句集団「鉄塊」に参加するなど、精力的な活動を続けている。

描かずに大樹の前  藤井雪兎

大樹を前にして、そのあまりの巨大さに筆が止まった。あるいは、描くつもりもなくやって来て、大樹の前で立ち止まった。どちらにせよ、大樹感が感じられる。

わかりやすい男に酒が来た  同

注文した酒がやって来るまでの間に、相当量の情報をこの男は既に知られてしまっていたのではないか。飲み会はまだまだはじまったばかりである。彼が隠したい情報を隠し通せることを祈りたい。

嫌いな人と台風の中ゆく  同

仕事の最中か、たまたま帰り道が一緒になったのか。「苦手」ではなく「嫌い」と言い切るところに、作者の本気度を見る。しかし、台風という共通の敵と対峙したことによって、意外と仲良くなっているのかもしれない。

白いままの便せんに雪が落ちた  同

未だ使用していない便せんを屋外で開き、何を書こうか考えていたところか。寒くはないのかという心配が生じるが、詩的な景である。

はじめての詩を書いて吐く息の白さ  同

この初々しい詩人は、十代の少年少女のように思える。多感な時期に感じた様々な思いを詩として吐き出し、筆を置いたところだろう。もろさと美しさが同居しているような景だ。

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