2013-09-08

内田遼乃 「前髪ぱっつん症候群(シンドローム)」解題 外山一機

内田遼乃 
「前髪ぱっつん症候群(シンドローム)
解題


外山一機



この作品は俳句甲子園の東京予選に向けてつくられたものです。結局これらの句を俳句甲子園で使うことはなく、だからこれまで誰の目にもふれることはありませんでした。作者の内田遼乃は今年の春に僕の勤務校にある俳句同好会に入ったばかりの高校二年生で、俳句を作るようになっておそらく半年も経っていないでしょう。歳時記にさえほとんど触れることのないまま俳句をつくり、俳句甲子園に出場しました。一〇句に「めだか」「初夏」「網戸」というフレーズが入っているのはそのためです。

東京大会では「めだか、三号機の代わりなんていないの」「網戸ってきれいでこげためろんぱん」「初夏やペーパーバックの悪の華」といった句を出しました。これらの句を出したのは、内田の場合、俳句甲子園という場が受け入れてくれそうな句がこの三句の他にほとんど見当たらなかったという事情もあります。内田の句がさほどの好成績を残せなかったのはいうまでもありません。そのような場所で披露するにはあまりにふさわしくない句をつくるということにこそ、内田の本領があったのですから。

僕は内田にほとんど指導らしい指導をした記憶がありません。内田はほとんどその最初期からこのような俳句を、それも大量に作っていました。僕はそれらを一読して、初めはその表現の未熟さに驚きました。しかし僕は次第に、その未熟さが、内田の表現がまぎれもなく内田の表現として立つための必然として要請された未熟さなのではないかと思うようになりました。

僕はこうした俳句を読んだことがありませんでしたから、面白いと思いつつも、どうしたらよいものか戸惑っていました。そして、おそらく内田の句を受け入れてくれる場は、高校生向けの俳句コンクールやイベントの場ではないとも思っていました。今回は運良く『週刊俳句』の西原天気さんに読んでいただき、これらの句はようやく陽の目を見ました。内田の句がはたして面白いのかどうか、ご自分の目でお確かめください。

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