2013-10-06

【週俳9月の俳句を読む】 滝のもう一方の本質 小池康生

【週俳9月の俳句を読む】
滝のもう一方の本質

小池康生


滝しぶき燭の炎の揺るがざる  高柳克弘

滝は清涼感のある場所であるが、一方で危険な場所なのである。

燭の炎があるので、神社の滝だろう。禊が行われる。禊は、魂の悪い気を排出して人間を浄化する。

ここで忘れられがちなことは、滝壺には、吐き出された気が漂っているということだ。禊の見学などをしてはイケナイ。下手をすると、悪い気を持って帰ることになる。

浄化作用と、澱の溜り場。滝壺には二面性がある。その近くにある社の燭の炎は、しかし、揺るぎない。

滝のもう一方の本質に迫る句とお見受けした。


顔寄せてミントにほへる浴衣かな  高柳克弘   

あのメーカーの100円のものだろうか。おもしろいCMを流すあのメーカーのものだろうか。私もミント愛好家だが、ミントの香が他人を不愉快にしていないか、結構、気にしている。こんな風に詠まれたなら幸せだろうな。

 


秋灯のひとつ港を離れけり  村田 篠

秋灯は、家であったり、陋巷の巷であったり、そこにじつとしているものと思っていたら、動きだした。ありゃ。新鮮な驚き。軽い驚きだが、それは秋に見合うもの。

沖まで、作者は視線で追いかける。気持ちよく。


町名のここより変る白芙蓉  村田 篠

国境や県境は、争いの場所。賢い民族は中立地帯を設ける。
白芙蓉は、美しい中立地帯だ。

 


団栗を持ちそれなりの気分かな  今泉礼奈

「団栗」という季語は難しい。それをさらりと交わすかのような句。
確かに。確かに。


溢蚊をそつとはらひて告白す  今泉礼奈

「溢蚊」と「告白す」の取り合わせは、とても新鮮。
だれでも言えることを書くと、中7があまりに・・・。

 


さびしいさびしい幽霊ついてくる  北川美美

なぜ、ついてくるのか。幽霊だからだ。

まだ、広く認知されていないが、「銀化」では、幽霊は夏の季語。
この句は、晩夏だろうか。


鶏を乳白色に煮て白露  北川美美

参鶏湯だろうか、単に鳥ガラスープだろうか。
露も白く濁るが、作者の料理も白く・・・。色合い、雰囲気からは、暑さと涼しさの入れ替わり。旨そう。


幽霊も頬被りして踊りの輪  北川美美

幽霊を季語とすると、三つの季語。二つであろうが、三つであろうが、確信犯であろう。こういう句を発表できるところが、週刊俳句。

しかし遊びで書いているのではないだろう。大阪の南河内にもそういう幽霊はいた。


抜歯するほかに手はなし秋の暮  北川美美

釣瓶落しのように、ストンと昏くなる気分。
いやだ、いやだ。しかし、どこかに達観した気分も混じり、スルーできない句。

この人の句を追いかければ、もっと深い共感があるような気がする。

もとい(出たぜ、“もとい”)。一行目から勝手なことを書いた。九月には、もっとたくさん佳句があったはず。

わたしは、わたしの鑑賞できる句だけを書き、書いたつもりになり、何も書けていなくて、しかし、また書きたくなるのだ。

妄言多謝。


第332号 2013年9月1日
髙柳克弘 ミント 10句 ≫読む

第333号 2013年9月8日
佐々木貴子 モザイク mosaic 10句 ≫読む
内田遼乃 前髪パッツン症候群 10句 ≫読む

第334号2013年9月15日
村田 篠 草の絮 10句 ≫読む

第335号2013年9月22日
小早川忠義 客のゐぬ間に 10句 ≫読む
今泉礼奈 くるぶし 10句 ≫読む
仁平 勝 二人姓名詠込之句 8句 ≫読む

第336号2013年9月29日
北川美美 さびしい幽霊 10句 ≫読む

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