2014-07-06

【俳誌を読む】読者の季節・作者の季節 『ににん』第55号(2014年夏号)を読んで 西原天気

【俳誌を読む】
読者の季節・作者の季節
『ににん』第55号(2014年夏号)を読んで


西原天気


 『ににん』第55号(2014年夏号)は、冒頭に「佃島盆踊」と題された6ページ、会員諸氏による佃島念仏踊りを題材にした12句連作が6つ並びます。

えっ!

びっくりした理由は、この毎年恒例の盆踊りが7月中旬の行事だからです。今年は来週7月13日(日)から3日間。

『ににん』のこの号は7月1日発行。つまり、上記12句連作は、今年の佃島念仏踊りを待たずに作られたということです。12句は7月に限定されず、作者によっては季節が1年にわたる連作もありますが、いずれにせよ、雑誌の刊行時期=読者の手に渡る時期に合わせた企画です。

一般の雑誌なら、これは当たり前のことです。例えば11月に紅葉の特集を組むのに、11月の紅葉を待っていたのでは間に合いません。9月から遅くとも10月までには紅葉の写真や記事が用意されます。春の号の写真のために桜満開を待っていたのでは、初夏の号に桜が載ることになってしまいます。

紙媒体の雑誌は、製作期間(執筆・編集・印刷・製本・配本)を見越して、季節を先取りしながら作る。

では、俳句の結社誌・同人誌は、どうでしょう?

特に結社誌は、投句→主宰の選→制作という手順なので、例えば7月に届く号には、春の句が並びます。今はデジカル化もあって制作期間は短縮されていますからそのタイムラグ、俳句が作られる時期と俳句が掲載される時期のタイムラグは短くなってはいますが、以前なら3か月くらいズレるのもふつうでした。

一般雑誌は、読者の季節に合わせて届く。

結社誌・同人誌は、作者の季節が誌面に反映し、数週間から数か月遅れて、読者に届く。


この違いはたいそう大きいです。結社誌・同人誌に慣れたアタマだと、真夏に春の句を読むことに、なんの不自然さもないのでしょうが、俳句という枠組みから少し離れて眺めてみると、少々ヘンな感じです。

これは、作者優先はヘンだからやめよ、というのではありません。結社誌は、投句と主宰選がいちばんの柱ですから、作者の季節が優先されて当然でしょう。けれども、読者の季節を意識した刊行スタイルも、あっていいのではないでしょうか。

『ににん』の「佃島盆踊」の連作群という企画は、これまでの結社誌・同人誌スタイルと、まったく違う。読者の季節、読者の時間に合わせて、俳句を届けようとしている。それで、びっくりしたのです。


  
 

タイムラグを産まない、という点で、ウェブは有利です。この週刊俳句では、基本的にタイムラグのない作句→作品掲載という手順が実現できています。

では、紙媒体でも、タイムラグなしに、読者の季節に合わせた俳句を届けることはできるか。

数か月先の季節の句を作るという手もありますが、それはあまりぞっとしない。例えば、今(7月)に、秋に出る号に掲載されるから秋の俳句を作句する。それって、どうなのか。せっかく今(7月)の季節に暮らしているのに、わざわざ秋のモノに思いを至らせるのも、なんだかねぇ、という感じがします。

ひとつ、方法は、去年やそれ以前の句をまとめる。別の言い方をすれば、1年以上、あたためておく。作った句をエイジングさせるという方法です。個人的には、これがオススメ。


 

俳誌単位の話に戻しましょう。

繰り返しになりますが、どうしてもタイムラグが出てしまう紙媒体でも〔作者本位〕という従来型の俳句の届け方だけではなく、〔読者本位〕がもっと企図されていいのではないか。そう思うわけです。

 

 

最後になりましたが、『ににん』の「佃島盆踊」から句を引かせていただきます。

納涼船勝鬨橋へ急ぎけり  浜田はるみ

いつまでもこの世の端で踊りたし  武井伸子

朽ち船の灼けて夜となり踊りの輪  高橋寛治

仕事着のままの念佛踊りかな  河邉幸行子

がらあきの空を被りて盆踊り  岩淵喜代子

船虫の眠りを覚ます太鼓の音  宮崎晩菊

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