2014-11-16

【週俳10月の俳句を読む】暴動のこと 堀下翔

【週俳10月の俳句を読む】
暴動のこと

堀下翔


秋の虹電話線上の暴動 福田若之

電話を通してなにかよからぬ騒ぎが起こっている。大騒ぎなのだろうが、電話なので、そんなことは誰も知らない。外を歩いているひとも、まさか頭の上の電話線で暴動が起こっているとは思うめえ。

ところで、電話をもってなす暴動というのは、よく考えれば、ちょっと変だぞ。暴動というからには、群衆が集まって、暴れてしかるべきである。電話は一対一。暴動にはなりようがない。あるいは、一箇所に向かって、なんらかの意思をもった人々が、一斉に電話をかけているのか。

いま筆者の頭には、のどかな風景に張りめぐらされた電話線と、その上を走り回る、市民たちのアバターが浮かんでいる。二頭身くらいの、大きくデフォルメされたアバターが。コミカルで、かわいい。秋の虹が置かれているから、そんな気がする。

この戯画は近未来的である。未来が訪れたときには古びてしまうことが約束されたような未来観。どの時代の未来図もいまとなってはとんでもなくダサくなってしまったのと同じように、この句もそのうち、見ていられないようになるのだろう。

作者はきっとそのダサさが好きなのだ。そうでなければ、電話線なんて古めかしいことばを選ぶ必要はなかった。



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