2014-11-30

自由律俳句を読む 70  尾沢寧次 馬場古戸暢


自由律俳句を読む 70  尾沢寧次

馬場古戸暢


尾沢寧次(おざわやすじ、1886-1967)は、長野出身の自由律俳人。23歳の時に渡米し、米国にて薬剤師として働いた。「ヴァレー吟社」を創立主宰。海紅派とされる。以下『自由律俳句作品史』(永田書房、1979)より、数句を選んで鑑賞したい。

麦秋の風の行手長者の名は忘れて通る  尾沢寧次

前回に紹介した鏡太郎と同じく、寧次もまたアメリカ移民であった。この句がどこで詠まれたものか知らないが、アメリカのかおりを感じないでもない。

母娘三代の顔であり夏の日縫屑ちらす  同

母娘三代が、裁縫に精を出している様を詠んだものだろう。生活のためか趣味かわからないが、彼女たちの腕は確かなもののように思う。

お寺のさつき空後槻さんを僧形にす  同

後槻とは、先に紹介した伊藤後槻のことか。両者ともに海紅派であり、親交があったのだろう。僧形になるには、さつき空がふさわしいのかもしれない。

甲斐の山川夏めく武田滅びた歴史  同

歴史に詳しいと、各地で昔に思いを馳せることができる。少しばかし、羨ましく思う。

義歯をおき夏夜髑骸と見へたは老耄  同

このおいぼれは、誰かのことか自身のことか。こうした景を見聞きすると、芥川の羅生門を思い出さずにはいられない。


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