2015-01-25

第6回石田波郷新人賞受賞作を読む(前編) さとうあやかとボク出張版波郷賞を読む      佐藤文香

第6回石田波郷新人賞受賞作を読む(前編)
さとうあやかとボク出張版波郷賞を読む     

佐藤文香


さとう 石田波郷新人賞の受賞作を読めだってさ

ボク 開口一番感じ悪いですね。ボクは若手といえば『新撰21』や『俳コレ』くらいしか読んだことないので、けっこうワクワクしています。どれどれ、角川の『俳句』1月号に掲載されるのか。新人賞を受賞した堀下さんは……もしやまだ19歳ですか!?

準賞のトモロウに至っては17歳だ。わたしのひとまわり下だ。

なんで呼び捨てなんです。お知り合いなんですか。

いや、わたしが協力してる俳句甲子園漫画『ぼくらの17−ON!』で、最強イケメンチームのひとりがトモロウって名前なんだよ。

しれっと自分の宣伝するのやめてください。

失敬失敬。でも奨励賞の堀切さんはわたしの2コ上だよ。

では、その方の作品から参りましょう。


月白 堀切克洋

どうだった?

余裕のある文体、内容的にはユーモアとロマンが散りばめられていて、安心して読めました。ボクは

箱庭に銀河のごとく細石

がいいと思います。箱庭といえば小さく完成した世界ですが、〈銀河のごとく〉と言うと急に心が空へむかいます。箱庭であっても、空は平等に無限なものなのだ……と感じて〈細石〉にもどってくる。すると、箱庭のなかにあって、石が光を放つかのように感じられるじゃないですか。箱庭という小宇宙をうまく描いている一句です

語るねぇ。それはちょっとやりすぎじゃないかと思うけど。わたしは

粽結ふ少し遊びをもたせつつ

が好きだよ。〈遊び〉ってw もっともらしく言ってるのが面白い

文机の傷のあらはに月白し

なんかも端正でいいと思いますけど

20句のタイトルが〈月白〉でさ、たぶんその句からとってるんだと思うんだけど、〈月白し〉と〈月白〉って違うんじゃね?

〈月白〉は「月が出ようとして空がほの明るくなること」ですから、空のことですね。「白月」だと「白く輝く月」とあります。作品中の〈月白し〉は、月自体のことでしょうから、その作品の月によって白んだ空がタイトルの〈月白〉ととらえればいいのではないでしょうか。

そこまで考えてないんじゃないかなー。はじめに君が余裕って言ってて、たしかに〈蝸牛しづかに泡を吹きにけり〉とか〈蟷螂の尻ふるはせてゐるばかり〉とか、それはわからんでもないんだが、天然すぎるんだよね、余裕が。悪い意味で意図がない気がする。〈松風に散る紅梅でありにけり〉〈夏シャツに海よりの風孕ませて〉みたいな、取るに足りない句があると、まとめて読んだときに狙いが見えにくい。文体で作家性を確立していくのであれば、もうちょっと頭使った方がいいんじゃないかな。性格はよさそうだけど。

ボクはさとうさんの性格のわるさの方が気になります。

かものはし わたくしは〈うみうしの取り残さるる磯遊〉がいいと思いましたね。

お前、オーストラリアに帰ってたんじゃなかったのか。

かものはし「週刊俳句」に載ると聞いて帰ってきましたよ。

かものはしは動物の句が好きだからな。

かものはし この句はうみうしの派手な色が見えるのがいいですね。

まぁ、そうだ。発見を大袈裟にしない、素朴な読みぶりに好感がもてた、というところでしょうか。


この蔦を 黒岩徳将


この20句はさ〈夜のシャワー俺が捕つたら勝つてゐた〉がいいよね。

たしかにその句は面白いと思いました。句にドラマがあります。

これがもし、俺のせいで負けた試合や夜のシャワー、とかだったら全然だめだよな。

それだと、物語の要約になってしまうから、ですね。いろんな句のつくり方があると思いますが、ドラマチックなものほど、焦点を絞ってストーリーの断面だけを見せるのが効果的だと思います。

シャワーで全身ずぶ濡れの青年が、今日の試合を思い出してぐわーっと辛い気分になってるんだけど、まわりは静かで、俺は独りで、シャワーが終われば寝るしかなくて、悔やんでも明日はくるし、嗚呼……。

入り込みすぎです。

わたしはこの一句を軸に、20句を読むのがいいように思った。俺のアクティブな日常、みたいな連作として。

姿見を飛び出す頭夏兆す
食ひ終へて炎天の手に棒ありぬ
ポインセチア四方に逢ひたき人の居り

なんかも、主人公をシャワーの〈俺〉に設定することで、ぐっと愛着がわくよね

かものはし 愛着のわかない句をあげてもよろしいですか

なんかあったか?

かものはしペンギンの嘴にしづくや夏の果〉ペンギンは媚を売る生き物ですから、それを句に入れるのはあざといですね。

それは偏見だろ! ペンギンの可愛さに頼るのではなく、なんでもない〈しづく〉に着目しているからこそ、〈夏の果〉という季語が輝くんじゃないか。

かものはしは前からペンギンにうらみがあるらしいんだよ。それより、

つまらなきものの輝く夜店かな

わたしはこの方向には未来がないと思うんだけど。

どうでもいいおもちゃや、大して美味しくもない食べ物なんかが、夜店だからこそ輝いて見える、ほしくなる。夜店らしさをズバリ言い当ててるといえるんじゃないですか?

だからだよ。上手に言ったったゼみたいな句には興味ないんだ。

それはさとうさんの好みの問題じゃないんですか。一般的にはこういった句が好まれるような気がしますけど。

わたしはもっと未来な句が見たい。


広がる町 今泉礼奈


ボクはけっこう苦手でした。なんというか、よくわからない。

さっきの黒岩氏の連作の主体がアクティブ男子なら、この連作は妙な女子だよな。じぶんではちゃんとかわいくしてるつもりなんだけど、外から見たらだいぶ変なヤツだ。

とくに、

せんべいに表の味や花疲れ
初冬に銘菓をもらふ手のかたち

このへんがわかりません。せんべいに裏も表もないでしょうし、銘菓といわれてもなんのことやら。

それがこの人の良さだと思うんだけどなー。口に入れて舌にのせたせんべいを噛まずに感じてみるとか、おみやげでひとつずつ配られる地方の銘菓の、それが何かはどうでもよくて、受けとる掌のかたちに注目するとか。

箸くばる手に酢のにほふ晩夏かな

これも、すし飯でもつくったのかな、旧家のお盆を想像したよ。たくさんで食べる料理を用意して、そろそろ食べるってときに割箸配るじゃん? その自分の手がすげー酢っぽいの。それと同時に、さっきまで料理してて気付かなかった晩夏っぽさを感じる。

双六の紙をおさへる係かな

これなんかはどうなんですか? こんなこと詠んで面白いんですか?

〈係かな〉って言い方が、茶目っ気があっていいじゃないか。思ったけどさ、君、こういう女の子が苦手ってだけじゃないの?

そんなことないです。表題句の

噴水より広がる町を歩みけり

は、なるほどと思いました。リズムが整えば、もっとこの句の内容のすがすがしさにマッチすると思いますが。

たしかに、言い回しががちゃがちゃしてるとことかはあるけど、〈つばくろや窓と格子は少し遠い〉みたいな句は、それが是正されたらよくなるってもんでもないと思うんだよな。あんまり大人びてほしくない。

とすれば、ボクはこの人の作家性みたいなものにあまり興味がない、ということでしょうか。

君はもう少しいろんなタイプの人と付き合ったほうがいいよ、男子も女子も。

余計なお世話です。

(後編に続く)

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