2015-02-08

【週俳・2015新年詠を読む】新年詠を読んだ。 生駒大祐

【週俳・2015新年詠を読む】
新年詠を読んだ。

生駒大祐


遠くにいたので、正月の週刊俳句を見ていなかった。
それを利用して、今回は無記名で新年詠を読み、上から10句を選んでみるということを行ってみた。

俳句を無記名で選ぶ、というのは実は不思議な行為である。
それは犬が、知能ではなく嗅覚を元に算数の問題を解くのにも似ている。
かすかな手がかりを元に、私の中の「俳句」を探す。
コメントは、ノートの隅に書かれた落書きだと思ってくだされば。

1 物と物触れ合はずある淑気かな      
普遍的なことを言おうとしている。「ある」が動かない。

2 正月のいたるところに貼つてある    
白を想像させる句。正月とは白いものなのか。

3 歌いだすまえの冷たいお正月       
皮膚感覚の句。共感覚でもある。滲む感じがした。

4 からまつは縦に美し初茜         
a音は縦方向の音なのだなと思った次第。

5 鏡餅歯科医師レジスターを打つ      
アクチュアルな句だが、言葉の世界にいまだとどまっているように思った。

6 裏白や岬は空をつらぬけり        
下からのアングル。ここでも白が出てくる。

7 双六を司る手のきらきらす        
自らの繊細さを出すことを厭わない姿勢がある。正しいか。

8 静岡は良いところなり初笑        
初笑がテクニカル。俳句。

9 てのひらに遠き手の甲年明くる      
言葉の世界の構築の方法が確立されてしまっている。ほんとうに正月なのか。

10 鏡餅しんしんと杉立ち並び        
鏡餅の質感と杉の質感。テクスチャーの相違。言葉の質感の相違でもある。

俳句は、既に終わっている。
優れた問いとはおそらくそういうものだろう。
ゆっくりと閉じていく幕を見ながら、これまでを短く回想する。
そう感じた。

物と物触れ合はずある淑気かな        依光陽子
正月のいたるところに貼つてある       嵯峨根鈴子
歌いだすまえの冷たいお正月            田島健一
からまつは縦に美し初茜             南十二国
鏡餅歯科医師レジスターを打つ           瀬戸正洋
裏白や岬は空をつらぬけり                  五島高資
双六を司る手のきらきらす                   黒岩徳将
静岡は良いところなり初笑                   西村麒麟
てのひらに遠き手の甲年明くる            山田露結
鏡餅しんしんと杉立ち並び                   村上鞆彦

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