2015-02-22

【八田木枯の一句】ねころべば血もまた横に蝶の空 西原天気

【八田木枯の一句】
ねころべば血もまた横に蝶の空

西原天気


ねころべば血もまた横に蝶の空  八田木枯

血に縦や横があるのか。身体をめぐるのがその液体ならば、身体が横になれば、それもまた横になるのだろう。

この、あたりまえのような、なんかちょっとおかしいような12音が、座五の「蝶の空」でがぜんいきいきとする。

この人は、外で寝転んだのだ。ただ、一般的に「横」になったのではない。すると見えたのが「蝶の空」だった。

季語は、そのときどきの空気や心持ちで、読者を包み込むと同時に、事態をはっきりと確定する働きをもつ。

そこは畳じゃなかったのだ。「血」を「横」に感じたのは、蝶の空がそこにあったその瞬間のことであった。

俳句はあんがいこうした手順(驚くほどでもなく小難しくもないが、ていねいで周到な手順)、作者が親切に用意してくれた「はからい」によって、読者に届く、読者のものとなる。

掲句は第3句集『あらくれし日月の鈔』(1995年)より。



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