2015-05-10

【週俳4月の俳句を読む】モヤっとしたもの 原知子

【週俳4月の俳句を読む】
モヤっとしたもの

原 知子


単純に楽しく読んでもいいのかもしれない。でもやっぱり100%「楽しい」とか「面白い」とかだけでは読めなかった。どの句も楽しいのにモヤっとする。きっと最初に「戦争」というタイトルを見てしまい、「戦争にいろんな事情九条葱」という句を読んでしまったからだろう。「戦争」という語の強さを思う。

はじめと終りに「戦争」で始まる句が置かれた「戦争」10句、全体で一篇の詩のように読んだ。

冬の乳首、熊を撃つ女、おでんの会社、ふとんを取りにゆく俺、トリオ・ロス・パンチョスの待春、家具の恋、うれしいいそぎんちゃく、鉄分、こうやって欠片を並べるだけでも楽しい。作者はどの句もいとおしんで詠んだのではないかと思う。

なのに、この10句のなかに置かれたことで、乳首もおでんの会社もみんな、戦争とはまったくの無縁ではなくなってしまった。

なんだか勿体ない、と思う一方で、こうやってモヤっとすることこそ大切なのではないかとか思ったり、結局私は「戦争」という語に過剰に反応しているだけではないかと思ったり。おちつかない。

男の子がやってきて叫ぶ。「戦争はぜつたいあかん夏蜜柑

この句を読んだとき、半ズボンを履いた少年が、はっきり大きく口を開け、一音一音が確実に(促音の「つ」も)届くよう「ぜつたいあかん」と言っているのが浮かんだ。

この一句で、モヤっとしていたものがすこし晴れたような気がする。

夏蜜柑の香りでスッとした。




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