2015-06-14

自由律俳句を読む 97 青木此君桜〔1〕 馬場古戸暢

自由律俳句を読む 97
青木此君桜〔1〕

馬場古戸暢



青木此君桜(あおきしくんろう、1887-1968)は、福井出身の自由律俳人。層雲へ入るも、俳句は短律でなければならぬと主張し、層雲を離れて「新俳句」を主宰した。以下では数句を選び、鑑賞したい。

草におればあたたかくうしろ通つていく  青木此君桜

川沿いの土手に寝転んでいると、その後ろを人か牛か何かが通っていった様を詠んだものだろう。草原に寝転ぶという行動に憧れがあるが、実際に自分でしてみると、手持ち無沙汰ですぐに起き上がりたくなる。

つくろうて着るとて春がくる  同

五四五の韻律が、春らしい様子をよく描いているように感じる。あるいは、九三二で読んでもおもしろい。

牛のいかりに正しく牛の綱がある  同

綱は、脱走防止用ではなく、実はいかり用だったのであろう。実に正しい。

咲くとしつぼみべにさしている  同

鏡台の前で口紅をぬっている女性が、まずもって浮かんでくる。べにはとにかく色っぽいのである。

今以て座右にあつて一個の石塊  同

ここでの座右は、文字通り座っているところの右側のことだろう。どうでもよい石の塊を川辺からひろってきて幾十年、捨てるにもはや捨てれまい。

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