2015-10-11

【八田木枯の一句】 柿の木に昔の日ざしありにけり 西村麒麟

【八田木枯の一句】
柿の木に昔の日ざしありにけり

西村麒麟

柿の木に昔の日ざしありにけり 八田木枯

『八田木枯少年期句集』より。

八田木枯と言えば、桃なのだけど、柿の句も少しはある。

『八田木枯全句集』には〈桃ほどに腐まずに柿寂びにけり〉の一句があるだけで、そのほとんどは『八田木枯少年期句集』に入っている。

これはその一句。

柿から桃に興味が移る心は、晩年に牡丹を愛した心に似ている。そこに「木枯好み」のヒントがあるような気がする。

興味深いことに、若き木枯はすでに「桃ほどに腐まずに寂びて」の目を持っていたのだろう、この句はそう感じさせる。

本当のところは「いつもの」日ざしがあるだけなのだろうけど、柿の木を見ているとそんな気分になる。

現実の柿の風景と、見えているのは異なる。心から、昔の日ざしが見えているのだろう。

見ているものが見えているわけではない。



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