2015-11-08

【八田木枯の一句】いちにちが障子に隙間なく過ぎぬ 西原天気

【八田木枯の一句】
いちにちが障子に隙間なく過ぎぬ

西原天気


第6句集『鏡騒』(2010年)より。

いちにちが障子に隙間なく過ぎぬ  八田木枯

ある意味シンプルな事柄がシンプルな筆致で作られています。

A いちにちが過ぎた。

B 障子に隙間がない。

AとB、どちらもあたりまえのことです。過ぎない一日はないし、障子というもの、たいてい隙間はない。

(時間もまた隙間なく流れるものですね)

二つのあたりまえが、定型のなかに巧妙に設計されています。

「障子に隙間なく」が副詞節として「過ぎぬ」という動詞にかかる。これは少なくとも散文的ではありません。定型ゆえの構造。

景色はどうでしょうか。

一日の経過のなかに置かれたのは、障子いちまい。それのみ。しかし、そこには、日の映り・移り・遷りがしっかりと含まれています。

それを前にした人(作者)は、畳の上にいます。どんな面持ちでいるのか、どんな気分でいるのか。それについては何も書かれていない。タブラ・ラサ(白紙)。障子のようなタブラ・ラサです。


巧妙に「シンプル」が設えられた句。


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