2015-12-27

週俳2015年12月のオススメ記事 ねぼけたはなし。 小津夜景

週俳2015年12月のオススメ記事
ねぼけたはなし。

小津夜景



中嶋憲武 握手〔ハイクふぃくしょん〕 第450号

週刊俳句は日曜日のマガジンゆえ、休日っぽい香りを醸し出している書き手がいると読者としてたいへん満ち足りた気分になる。記事のスタイルは、硬派でも軟派でもどちらでもかまわない。ただどこかしら日常とかけ離れた、純粋な無用さが感じられるとうれしい。

この基準から言って、いつも香り高い書き手といえるのが中嶋憲武氏である。氏の文体に備わるホリデー情緒はなかなか真似できるものではない。「握手」もコーヒーブレイク感覚あふれる掌編で、女の子の屈託ないかわいらしさもいつもながら。ちなみに、コーヒーブレイクの効果をとあるサイトでしらべると、

1 香りを嗅ぐだけでストレスを軽減できる
2 パーキンソン病の予防になる
3 幸福感が得られる
4 脳が健全に働くのを助ける
5 さらに賢くなれる

他いろいろあるようだが、氏の文章からは、まさにこの通りの体感が得られます。凄いね。


西原天気 スケールが引き起こすもの 矢野玲奈句集『森を離れて』の一句 第452号

12月の西原氏については、第451号の飯田冬眞氏の句集評がまずもって興味ぶかい。ただし感興という点では、平日に読んでも変化がなさそうだ。それに比べて、矢野玲奈氏の句集評の方には、無聊な時間にふわっと浮かんだ着想さながらの、素敵なたわいなさがある。「あのね・こんなこと思いついたんだけど……」といった声のきこえてきそうな内容が微笑ましい。よってこちらをオススメ。


相子智恵 月曜日の定食 10句  第451号
関悦史 水曜日の変容 10句  第451号
樋口由紀子 兼題「金曜日」 10句  第451号

相子智恵、関悦史、樋口由紀子の三氏による共演作品にも注目しなければならない。というのも、この三氏はウラハイの方でそれぞれ月曜、水曜、金曜の句評を担当している訳でですね、この「ふだんは平日連載のウラ・グループが、 オモテ側へ連れ立ってお邪魔してみる」といった特別版的趣向が、もうあからさまに休業日っぽいじゃないですか。

嵌めて鳴る革手袋や月曜来  相子智恵

ふつう革手袋というのは、そうそう音が鳴ったりしない。そう、しないのだが、この句の登場人物はいかにもドラマのごとく、絶妙のタイミングで「きゅっ」と鳴っちゃうんである(きっと作中の人物が美人設定なのだろう)。そしてこの演出こそが「月曜日」の始動感覚と作中人物の凛とした佇まいとを、手際よく表現する要となっているのは見ての通りだ。さらに言えば、明瞭で引き締まった文体も句の光景にぴったり。見つめていると自分まで清々しい女性になったかのような、さわやかな妄想に浸れる句。

輪郭のうすれて冷えて水曜日   関悦史

関氏おなじみの変容もの。つかみどころのないグレーゾンに半分足をつっこんだ句で、まさに本人をそのままキャラ化したようだ。これを読んで感じたのは、氏の作風の「中間性」ないし「半人半幽」的な気配と「水曜日」というのはすごく相性がいいんだな、ということ。今まで考えたこともなかったけれど、この日は一週間の中でいちばん磁場が不安定なのかもしれない。週のはじまりからもおわりからも隔たった場所での、感じるともない微妙な心もとなさが味わえる句。

あの川を金曜日と呼ぶことに  樋口由紀子

月曜日の颯爽ムード、あるいは水曜日の漠然ムードから一転して、樋口氏の「金曜日」は「番外日ゾーン」のオーラ満載である。作者と「金曜日」とのあいだの「関係の絶対性」をラジカルにつきつめていった結果、あえなく「金曜日」が作者に刺し殺されてしまい、どこにも存在してはいけない謎の物体X像(イマージュX)としてゆらりと化けた風にもみえる。

この十句は連作としても読みごたえがあり、またいずれの句においても「金曜日」が鵺的スポットとして機能しているようだ。個人的には「結婚の練習をする金曜日」なんかすごく怖かった。批評精神がほとばしっている。こういう感じ、俳人が書くのは稀なんだろうな。少なくとも、ホリデー情緒とか、デイリー情緒とか、そんな眠たい話をしている自分は一生川柳人にはなれそうもない。

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