2016-01-24

【週俳12月の俳句・川柳を読む】足裏の経験その他 西原天気

【週俳12月の俳句・川柳を読む】
足裏の経験その他

西原天気


なにやらの獣骨脆し枯野原  角谷昌子

骨と枯野。いずれも死と関連付けられる事物。けれども、句の主眼はそこではない。「脆し」は足で踏んだのか手でさわったのか。足裏か掌かは、そこにある脆さを経験した。事物との交接こそが大切。これは俳句に限らないんだけどね。



小田原に広げる夜着は鶴の柄  太田うさぎ

私(たち)は、かならずしもことばを道理でもって受け止めない。いつも冷静であるとは限らないから。

(だいたいにして、俳句を、冷静に読むとは、いったいどんな態度だろう。読む快楽をもとめるなら、冷静とは逆の状態に自分をセットアップするのがいい)

落ち着いて考えれば、夜着を広げるのは、小田原の、とある場所で、ということになるのだろうが、一読、小田原全域に広がるような巨大な夜着が、イメージとして広がる。夜着に鶴が飛ぶなら、なおさらだ。

夜着がひろがり、そして夜が広がる。

おのづから夜は広がり浮寝鳥  同

夜は夜空として空に広がる。景の対照として下方の水平に浮寝鳥が置かれる。技法・しつらえについては、このときにかぎり、享楽的読者もまた、いつも冷静なのです。



鳥好きの亡き先生や冬の柿  西村麒麟

八田木枯の鳥の句ですぐ浮かぶのは《春を待つこころに鳥がゐて動く》。西村麒麟は小誌掲載「八田木枯の一句」でこの句をすでに取り上げている。

http://weekly-haiku.blogspot.jp/2015/02/blog-post.html

掲句の「冬の柿」は、こころに棲む鳥が春に備える滋養のように読める。やさしさこのうえない柿。と同時に、木枯への敬愛に溢れる句。


第451号 2015年12月13日
相子智恵 月曜日の定食 10句 ≫読む
関 悦史 水曜日の変容 10句 ≫読む 
樋口由紀子 兼題「金曜日」 10句 ≫読む
第452号 2015年12月20日
角谷昌子 壮年の景 10句 ≫読む
太田うさぎ 以 後 10句 ≫読む 
西村麒麟 狐 罠 10句 ≫読む

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