2016-01-17

【週俳12月の俳句・川柳を読む】晴れた日の河原で 岡本飛び地

【週俳12月の俳句・川柳を読む】
晴れた日の河原で

岡本飛び地


吊革のマスクに隣る吾もマスク   相子智恵

皆さんはダイタクという双子の漫才師をご存じだろうか。私もごく最近になってテレビで2回見ただけである。

電車で隣に座ると双子だとバレるから恥ずかしい。一人が座って一人が立ってはどうか。二人とも立ってはどうか。などと電車内での立ち振る舞いを模索する、というていの漫才だった。

確かに、電車という不特定多数の人が密集する空間に似たような恰好の人が並んでいるのは、失礼ながらも一種のおもしろさがある。

この句ではきっと、窓ガラスにマスクの二人が映ったのだろう。まず他者ありきで、自分はあくまでもその隣の人、という客観がおもしろい句である。


眠れぬ夜つばさ音なくふくろふ来   角谷昌子

皆さんはふくろうの羽ばたきを目の当たりにしたことがあるだろうか。目の前で大きな翼がはためいたとは思えないくらい、本当に音がしないのだ。眠れぬ夜でもなければ、そばに来たことに気付かないのも無理はない。

一見幻想的なようで、実景らしいリアルさを持った句である。


水仙や長距離を行くフリスビー   西村麒麟

皆さんはフリスビーの上手な投げ方を教わったことがあるだろうか。

投げたい方向に対して半身に構え、フリスビーを片腕で抱えるように持ち、腕を伸ばしながら手首のスナップを利かせて投げる!

投げ終わりには投げたい方向に向かって腕と手が真っ直ぐ伸びているようにする。すると、不思議なくらい狙い通りにフリスビーが飛んでいくのだ。これが気持ちいい。飛距離が伸びるとなお気持ちいい。晴れた日の河原でささやかな風を浴びながらだとさらに気持ちいい。

しかし、どれだけ気持ちよく投げていても、どれだけ飛距離が伸びても、水仙は川を向き下を向き、フリスビーのことなんか見ていないのだ。

爽快感の中に少しだけ切なさのある句である。


第451号 2015年12月13日
相子智恵 月曜日の定食 10句 ≫読む
関 悦史 水曜日の変容 10句 ≫読む 
樋口由紀子 兼題「金曜日」 10句 ≫読む
第452号 2015年12月20日
角谷昌子 壮年の景 10句 ≫読む
太田うさぎ 以 後 10句 ≫読む 
西村麒麟 狐 罠 10句 ≫読む


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