2016-08-28

【週俳7月の俳句川柳その他を読む】探しにいきませんか 近見晴海

【週俳7月の俳句川柳その他を読む】
探しにいきませんか

近見晴海


自然体でいたいな、と思うし、人間より自然のほうがいいな、なんて思ったりもします。たとえば田中のように、あまがえるやあめんぼのそばでわたしも生きたい。うるわしいみどりの景色のなかで、彼(彼女)はとてもとうめいです。でもとうめいで生きることって、やっぱりすこしさびしいでしょうか。それともこのさびしいは、見つめているだけで取り残されるわたしの気持ちでしょうか。

やあと言うと田中は応えない雷雨  福田若之

小岱シオンが田中をものにしたがる夏  同

夕焼けにふいに田中を呼んでしまう  同

それでも晩夏なおも田中の名も叫んだ  同

受動的でしかないわけじゃなくて、そこに確かにいたのだろうとおもいます。わたしも会いたかったなぁ、田中。


青柿も実梅もわれも雨のなか  遠藤由樹子

中学高校と自転車通学だったのですが、夏は合羽を前かごにいれたまま帰ったりもしました。雨に打たれないと正直者に帰れないようなときのじぶんが青柿や実梅とおなじ質感なら、素直に嬉しいです。


鋏等の錆びる力を青蔦は  野口る理

自然のうつくしさに黙り込むとき、言うなればこんなことを思っているかもしれません。エボシ御前の銃身が壊れるとき、まだ息を呑むことしかできないわたしだけれど。


わたしはいまもそうなのだけれど、いまそうでない人も幼いころは知っていたはずと思います。自然とじぶんが、どうしても近いような気持ち。この句を読んでそんなことを感じました。

夏団地駐車場には水がない  上田信治

雨上がりでしょうか。水たまり、探しにいきませんか。




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