2017-11-26

【週俳10月の俳句を読む】月の魔力 小久保佳世子

【週俳10月の俳句を読む】
月の魔力

小久保佳世子


上森敦代の「月夜」。どれも月の魔力を感じる10句でした。

月の出のフォーク逆さに使いおり  上森敦代

逆さ?フォークの裏を使うこと?だとしたらちょっと当り前なので逆さに使うのはやっぱり柄の部分かも。そうなると俄かに謎めく景が始まります。月が出て世界はさかさまになったのです。

宵待の壺の中から波の音  同

眼前に壺があってそこから波の音が聞こえてくるとしたら、いまが昼と夜の狭間だから。夜を待つ時、人は動物のように耳敏くなるのかもしれません。

白き尾を抱えて眠る小望月  同

白き尾を持つ生き物と言えば狐や猫が思い浮かびますが、白き尾そのものが生き物のような存在感があります。抱えていなければ喪ってしまいそう。

コンソメの匂いの残る良夜かな  同

コンソメは澄んだスープのこと。濁りがなく透き通ったスープは良夜の空気のようでもあります。作者は良夜の中にまだ残るスープの匂いを嗅ぎ分けているのです。

月の船父が手招きしておりぬ  同

月は何故か死の気配を漂わせます。父は、どこに「おいでおいで」と誘っているのでしょうか。行ってはいけないところのような。

十六夜を巡れば骨の軋みけり  同

きいきいとなる骨は舟の櫓の音のようです。十六夜を巡る白い骸骨のような舟が見えてきます。

錠剤のひとつ失せたる居待月  同

多分、錠剤のひとつは月を待つつれづれに飲んでしまったのでしょう。我知らずそんなことをしてしまうのも月の夜らしいことかもしれません。

ちぎれそうな月が男の上にあり  同

空から月が剥がれて落ちてくる光景でしょうか。不穏な月の下にいる男をじっと見ている作者のクールなまなざし、コワイ!

城山に残る山彦昼の月  同

山彦は山の神の声ともいわれているようです。城山には山彦のあれこれも伝承されているのだと思います。

襖絵の虎が水飲む十三夜  同

水飲む音まで聞こえてきそうな月夜です。


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