2018-01-21

中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜 第34回 井上陽水「いつのまにか少女は」

中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜
第34回 井上陽水「いつのまにか少女は」



憲武●生まれて初めて買ったレコードということなんですけどね、ぼくは、買物ついでに親に買ってもらったというものを除いて、自分でレコード屋に行って買ったっていうのは、「陽水ライブ もどり道」ってLPです。

天気●最初がLPなんですね。

憲武●中学一年の秋、そろそろ初冬かという時でしたか。当時はね、ライブアルバムを実況録音盤って言ってましたけど、アルバム全部かける訳には行かないので、その中の「いつのまにか少女は」という曲です。



憲武●井上陽水を知ったのは、「夢の中へ」という曲のヒットと、友だちの綺麗なお姉さんが陽水を聴いているっていう情報からです。井上陽水への興味というより、お姉さんへの興味の方が大きかったんですね。お姉さんと同じもの聴きたいという。

天気●「友だちの綺麗なお姉さん」。はい、よぉく、わかります。

憲武●聴いているうちに、声の魅力が圧倒的で高音の美しさと、詩の面白さにハマっていきました。うーん、面白かったですね。詩が。シニカルな視線もあって。

天気●ほぉ。

憲武●この曲、シングル盤では「夢の中へ」のB面、今で言うカップリングウィズですか、なんですよね。シングルバージョンは、ちょい早めのテンポで、ピアノが印象的です。

天気●ふむふむ。

憲武●シングル盤のジャケットからもわかるように、この曲は森谷司郎監督「放課後」(1973年)の挿入歌です。

天気●へぇ。

憲武●後年、池袋の文芸座地下だったか銀座の並木座だったかで、観たんですが、主演の栗田ひろみが可愛くてね。東急世田谷線の山下って駅が出てくるんですけど、あの頃は本当に単線みたいな小さな駅で、それが映画の内容にぴったりマッチしてました。

天気●その映画、記憶にない。きっと観ていないですね。

憲武●ですよね。ビデオ化もDVD化もされてませんから。1980年頃の陽水のライブで、陽水自身が「ま、少女がいて、食事もすれば恋もする。散歩もする。というような映画で」と喋ってるように、淡々とスケッチしていく感じの演出がよくて、「日本沈没」「八甲田山」などの映画とこれが同じ監督かと思いました。幅の広い人です。

天気●なるほど。

憲武●この「もどり道」ってアルバムは、見開きのジャケットで、なかに「井上陽水 うれいの年表」という生まれてから25歳までを自筆で書いてまして、中3の時の項目に「ビートルズをラジオで知り一日中レコードを聞く」とあって、おお、なかなか見どころのある奴だと思いました。

天気●ふむふむ。

憲武●歌詞カードも陽水自筆で、それが達筆なんだけど癖のある字で、ぼくは当時クラスの班ノートとか、学校の一日の出来事をその文字をそっくり真似て書いたりしましてね、ぼくはトム・リプリーかと。

天気●「太陽がいっぱい」ね。そこ、「アラン・ドロンなわけないやろ!」とツッコまないといけないんでしょうけど、邪魔くさいから、割愛。それはそうと、井上陽水って、「ブラタモリ」の歌の人ですよね。聴いたことがなくて、関心もないので、うまく反応できなくて申し訳ない。

憲武●そう「ブラタモリ」の。タモリも陽水も福岡出身、サングラスがデフォルトということでウマが合うのかもしれないですね。いやあ、長々と話しちゃったなー。はははは。


(最終回まで、あと967夜) 
(次回は西原天気の推薦曲)

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