2014-08-03

【週俳7月の俳句を読む】文字の力 岡田由季

【週俳7月の俳句を読む】
文字の力

岡田由季



河骨のちかく通話をしてゐたり  鴇田智哉

俳人に好まれる花はいろいろあるが、河骨もそのひとつだろう。水辺の吟行で河骨の花に出会うと皆のテンションが上がることこの上ない。黄色く可憐な花の佇まいと、河骨というごつごつとした名前の響きにギャップがあり、興味をそそられる。また、睡蓮や蓮はそこに咲いていることをあらかじめ知って見に行くことも多いが、河骨はたまたま行ったら咲いていたというような花なので、その出会いに趣を感じるのかも知れない。
名前に骨という字がついているせいもあるだろうか。どことなく動物的な感覚を備えているように感じるのである。特に聴覚とは親和性があるようだ。「通話」といえば通常は電話での話を意味するから、河骨の見えるところで携帯電話ででも話をしている、と読めば何の変哲もない光景だが、それ以上のものを読み手に感じさせるのが「骨」「通」という文字の力だろう。この通話はきっと河骨を巻き込んでいる。


夏の渚それから豚は大変だつた  荒川倉庫

確か「豚の春」のときにも鑑賞をさせていただいた。それから6年と考えると感慨深い。結社誌でも豚の様子は知ることができるから、「それから豚は大変だつた」と言われ大いに納得するのである。「そうだね、いろいろあって大変だったね、豚も私も年とったね・・・」ところが、である。

この世明るし豚はプールへ投げ出され  荒川倉庫

どうやらまだ豚は青春の只中にいるようだ。落ち着くのにはまだまだ早く、これからも豚の屈折の日々は続いていくのだろう。


小岱シオンの限りない増殖  福田若之 

このような作品は一句一句を云々する感じでもないのだろう。

凝った作品だが、あまり深く考えずに読んでも、台詞部分を含めてひとつのストーリーとして意味が通るし、小岱シオンというキャラクターも感じられて、楽しめるようになっている。、手がかりのある分、ぼんやりとした読者にも親切な作りだと感じる。眺めている間に、サビと語りで構成されているひとつの曲のようにも見えてきた。


第376号 2014年7月6日
木津みち子 それから 10句 ≫読む
関悦史 ケア二〇一四年六月三〇日 - 七月一日 12句 ≫読む
第377号 2014年7月13日
西原天気 走れ変態 9句 ≫読む
第378号2014年7月20日
鴇田智哉 火 10句 ≫読む
第379号2014年7月27日
荒川倉庫 豚の夏 10句 ≫読む
福田若之 小岱シオンの限りない増殖 10句 ≫読む

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